東京地方裁判所 昭和22年(ワ)766号 判決
原告 吉永多賀誠
被告 日本国有鉄道
一、主 文
被告は原告に対し、金千八百十四円及びこれに対する昭和二十二年五月九日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支拂うこと。
原告の其の余の請求は棄却する。
訴訟費用中五分の四は、原告の負担とし、其の余は被告の負担とする。
二、事 実
原告は、「被告は別紙目録<省略>第一及び第二記載の物件を日本国有鉄道土讃線豊永駅において、訴外佐竹益美に引渡せ。若しこれが不可能の場合には、金二万五千六百円及びこれに対する昭和二十二年五月九日以降完済に至るまで、年六分の割合による金員を支拂え、訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに、仮執行の宣言を求める旨申立て、その請求の原因として、
訴外杉山豊は、昭和二十年六月二十七日国の経営に係る国有鉄道横須賀線鎌倉駅から、小荷物扱で、別紙目録第一記載の物件を、訴外佐竹益美を荷受人として同鉄道土讃線豊永駅まで運送することを委託し(切符番号第三号)、訴外三宅好之は、同年六月二十二日及び同月二十三日の二回に、小荷物扱で、別紙目録第二記載の物件を、同鉄道横須賀線鎌倉駅から、訴外佐竹益美を荷受人として、土讃線豊永駅まで、運送することを委託した(切符番号第七十二号及び第一六号)。從つて、訴外杉山及び同三宅は、国に対して、それぞれ別紙目録第一及び第二記載の物件を、国有鉄道土讃線豊永駅において、荷受人である訴外佐竹に引渡すことを求める権利を有していたものであるが、昭和二十二年九月七日訴外杉山及び同三宅は、いづれも、それぞれ、国に対する本件運送契約上の権利を原告に讓渡し、その債権讓渡の通知は、同年十二月十日国に到達した。而して、国の本件債務は昭和二十四年四月一日日本国有鉄道法施行法の施行に伴い被告に承継されたから、從つて、被告は原告に対して別紙目録第一及び第二記載の物件を、日本国有鉄道土讃線豊永駅において、訴外佐竹に引渡すべき義務がある。よつて原告は本訴において第一段として右物件の引渡を請求する。しかし、若し、本件物件が滅失して、被告がこれを荷受人に引渡すことができないとするならば、それは次のような理由で、国に悪意又は重大な過失があつたのである。即ち、本件三個の小荷物中切符番号第三号の小荷物については、その小荷物が昭和二十年七月二十日頃、本件鉄道運送の中継駅である高松駅で、同駅発第百五号列車に積み込まれたことが、同日、同小荷物の積卸受授証を同列車の乘務員が作成していることから明瞭であり、切符番号第七二号及び第一二六号の小荷物については、そのうち切符番号第七二号の小荷物は、同駅において、同年七月一日同駅発第一七号列車に、切符番号第一二六号の小荷物は、同駅において、同年六月二十八日同駅発第一三号列車に、それぞれ積み込んだ旨を同駅係員が中継受授証に記入していることからいづれもその頃高松駅に到達していたことが明かである。而して、高松市は、同年七月四日空襲による戰災を蒙つたけれども高松駅は火災を免れたのであり、又前記第一三、一七及び一〇五号の各列車はいづれも、白書高松駅を出発する列車であり、且つ、当時高松豊永間の鉄道沿線が、空襲を受けたこともなかつたのであるから、積載小荷物を、列車から到着駅において、取り卸すに際して、その列車の乘務員は、乘務員と着駅係員との間における、小荷物受授の証として、積卸受授証を発行し、発駅、着駅、切符番号、及び個数等の必要事項を記入し、甲片を荷物と共に、着駅係員に引渡し、乙片に其の受領印を徴すべく又その中継に際しては、乘務員と中継駅員との間における中継荷物受授の証として、乘務員は、中継受授証を発行し、発駅着駅切符番号及び個数等の必要事項を記入し、甲、乙両片を荷物と共に、中継駅係員に引渡し、丙片に受領印を徴し、中継駅係員は、甲片を荷物と共に、継送列車の乘務員に引渡し、乙片に、その受領印を徴する等の手続によつて、運送人である国は到着駅又は中継駅における荷物の取扱の正確を期し、託送荷物が、盗難にかかつたり、紛失したりしないような相應の手続をなすべき義務があつたのである。それにもかかわらず、前記のように、本件三個の小荷物中、切符番号第三号の小荷物については、昭和二十年七月二十日頃の高松駅発第一〇五号列車の乘務員が、積卸受授証を発行しているが、その乙片に受領印を徴することを怠り、又切符番号第七二号及び第一二六号の小荷物については、切符番号第七二号の小荷物は、同年七月一日の同駅発第一七号列車に切符番号第一二六号の小荷物は、同年六月二十八日の同駅発第一三号列車に、それぞれ積み込んだ旨、高松駅係員が、中継受授証に記入しているがこれ又その乙片に受領印を徴することを怠つており、結局、本件小荷物については、その取扱を明確にする手続が履まれておらず、甚だ盗難にかかり易い状態に放置されていたものと、いうの外なく、そのために、本件小荷物は小荷物運送を取扱う国有鉄道の係員か或は又其の他の国有鉄道從業員によつて盗み取られ、その結果行方が不明となり、被告において調査することもできなくなつているのであつて、これは運送人である国に本件小荷物が盗難にかかつても差支ないとする悪意又は、託送小荷物の管理を甚だしく怠つたという運送人としての重大な過失があつたのに外ならない。從つて、本件小荷物が滅失して、最早やそれを引渡すことができなくなつているとするならば、国は訴外杉山及び同三宅に対して、本件小荷物が滅失したことによつて生じた一切の損害を賠償すべき義務があつた。而して本件運送契約上の権利は、前記のように、訴外杉山及び同三宅から原告に、又その義務は国から被告に、それぞれ、承継されたのであるから、別紙目録第一及び第二記載の物件を現在あらたに、購入するに要する金員、即ち、同第一及び第二の各金額の欄の(二)に記載した各物件の時價合計金二万五千六百円を被告は原告に支拂う義務がある。そこで原告は被告に対しその金員及びこれに対する被告が遅滞に陥つた以後である本件訴状が送達された日の翌日の昭和二十二年五月九日以降完済に至るまで年六分の割合による商事の遅延損害金の支拂を求めるため本訴請求に及んだと陳述し、
被告抗弁事実中本件小荷物が空襲によつて焼失したとの事実及び本件小荷物が鉄道運輸規程上の高價品であるとの事実は否認すると述べた。<立証省略>
被告代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告の請求原因に対する答弁として、原告主張の事実のうち、訴外杉山及び同三宅と国との間に原告主張のような運送契約(但し、運送荷物の内容の点を除く。)が締結されたこと、本件物件が行方不明となり、調査不能の状況にあること、訴外杉山及び同三宅が本件運送契約上の一切の権利を原告に讓渡し、その旨の通知が国に到達したこと、本件訴状送達の日の翌日は、昭和二十二年五月九日であること及び高松駅発の第一三号及び第一七号列車が、いづれも、晝間の列車であつたことは認めるが、本件三個の小荷物の内容が原告主張のような物件であること、これらの小荷物のうち、切符番号第三号の小荷物は第一〇五号列車に積み込まれ、その列車の乘務員が積卸受授証を発行しているが、その乙片に受領印を欠いていること、及び第七二号及び第一二六号の小荷物はいづれも高松駅に到着し、同駅係員が、それぞれ、第一三号及び第一七号列車に積み込んだ旨をそれ等の小荷物の中継受授証に記入しているが、これ又、その乙片に受領印を欠いていることは不知、その余の事実は否認する。
原告の主張するような積卸又は中継受授証による託送小荷物の運送は平常時における正規の小荷物取扱手続であるけれども本件小荷物の運送の委託を受けた当時は、今次大戰の終戰直前であり、軍需品、疎開荷物等の鉄道輸送が輻輳し、鉄道職員も又應召、轉出等によつて極度に手不足の状態にあり、我国各地は到るところ連合軍の熾烈な空襲下に曝されて、夜間は嚴重な燈火の管制が行われ、このような当時の状況の下において兎も角も鉄道運送を続行して行くためには、原告の主張するような正規の荷物運送の取扱手続によることは不可能であつたのであり、現に当時国有鉄道においては、昭和十七年二月二十五日鉄道省達第百号小荷物扱貨物取扱手続第三十七條によつて準用される改正前の昭和十七年二月二十五日鉄道省達第八十九号旅客及び手荷物取扱細則第二百十六條の「一時ニ多数ノ手荷物ヲ受託シタル爲運送上特別ノ手配ヲ要スルトキハ鉄道局長ノ指揮ヲ受クベシ」という規定によつて、列車乘務員又は中継駅係員が小荷物に添付してある小荷物切符に記載された着駅名によつて小荷物の仕分をし、乘務員は、中継駅又は着駅係員に総個数だけを記入した受授証と共に小荷物の引渡をし、中継駅係員は、それぞれ着駅方面別輸送列車の乘務員に同じく総個数だけを記入した受授証と共に、小荷物を引渡すという、個数受授の簡略手続を、国有鉄道の鉄道局長が指令する方法も講じられて來たのであつて、正規の手続によらなくても必ずしも、国に悪意又は重大な過失があつたとは云えず、いわんや積卸受授証に受領印が捺してないというだけでは、国に悪意又は重大な過失があつたとは云えないと答弁し、
抗弁として、本件物件はいづれも空襲によつて燒失したのであつて、国は本件運送については何等注意を怠るところもなかつたのである。仮りに、そうでないとしても、本件物件の價格は重量一瓩について、金八十円の割合を超えるが故に、鉄道運輸規程上高價品と解すべきところ、訴外杉山及び三宅は本件運送契約締結に際して、要償額の表示をしなかつたから、被告は原告に対して鉄道運輸規程の定める限度を超えて賠償額支拂の義務はないと述べた。<立証省略>
三、理 由
昭和二十年六月二十七日国と訴外杉山豊との間に国は、国有鉄道横須賀線鎌倉駅から小荷物を、訴外佐竹益美を荷受人として、同鉄道土讃線豊永駅まで、運送する契約が成立し(切符番号第三号)、又同年六月二十二日及び同月二十三日の二回に、国と訴外三宅好之の間に、国は同鉄道横須賀線鎌倉駅から小荷物を、訴外佐竹益美を荷受人として、同鉄道土讃線豊永駅まで運送する契約(切符番号第七二号及第一二六号)が成立したことは当事者間に爭いのないところであり、その小荷物の内容が原告主張のような物件であることは証人吉永威子の訊問の結果によつて認めうるところであるが、本件小荷物がいづれも紛失して行方不明となり、調査不可能の状況にあることは被告の認めるところであつて、被告である日本国有鉄道が自ら調査の不可能なことを認めている以上、法律上は最早や本件物件が滅失し、右運送契約が履行不能の状況にあるものと解すべきであるから、この契約に基いてその履行を求める原告の請求はその理由がない。そこでこの履行不能が国の悪意又は重大な過失に基くものであるかどうかについて判断する。
証人佐竹正敏の訊問の結果によれば、本件小荷物中切符番号第三号の小荷物が昭和二十年七月二十日頃高松駅から第一〇五号列車に積荷され、その列車の乘務員によつて当該荷物の積卸受授証が発行されたが、その乙片に受領印を欠き、又切符番号第七二号及び第一二六号の小荷物はそれぞれ同年七月一日頃及び同年六月二十八日頃高松駅に到着しており、同日高松駅を出発する第一三号及び第一七号列車に積荷した旨を同駅係員が中継受授証に記入したが、これ又その乙片に受領印が捺されていない事実を認めることができ、乙第二号証の一のイ乃至同号証の二及び三の各イ乃至へによつてはこの認定を覆すに足りない。しかしながら、被告も主張するように、本件運送契約が締結された当時は、今次大戰の末期に当り、我国全土は連合軍の熾烈な空襲下に曝らされて、我国内は極度に混乱した情況にあり、しかも軍需品をはじめ、疎開荷物等の鉄道輸送は輻輳し、国有鉄道の職員も應召、轉出等によつて極めて手不足の状態にあつたことは公知の事実である。そしてこのような情況の下においては、平常時におけるような正確ではあるが手間のとれる複雜な正規の小荷物取扱手続に從うことができなかつたとしても、それはこのような逼迫した当時の状況からいつて誠にやむをえない次第であつたと解せざるを得ない。即ち正常の時においては原告の主張するような現行の昭和十七年二月二十五日運輸省達第八十九号旅客及び荷物運送取扱細則第二百四十一條及び第二百四十二條の規定に從つて、小荷物を到着駅において、列車から取り卸すに際して、その列車の乘務員は、乘務員と着駅係員との間における荷物受授の証として、積卸受授証を発行し、発駅、着駅、切符番号及び個数等の必要事項を記入し、その甲片を荷物と共に着駅係員に引渡し、乙片に受領印を徴すべく、又その中継に際しては、乘務員と中継係員との間における中継荷物受授の証として、乘務員は中継受授証を発行し、発駅、着駅、切符番号及び箇数等の必要事項を記入し、甲、乙、丙片を荷物と共に中継駅係員に引渡し、丙片に受領印を徴し、中継駅係員は、その甲片を荷物と共に、輸送列車の乘務員に引渡し、乙片に受領印を徴して、これを保存するという手続によつて、小荷物運送を行うべきものであるが、当時の状況としては運送人である国が昭和十七年二月二十五日鉄道省達第百号小荷物扱貨物取扱手続第三十七條及び昭和十七年二月二十五日鉄道省達第八十九号旅客及び手荷物取扱細則第二百十六條の規定で「一時ニ多数ノ手荷物ヲ受託シタル爲運送上特別ノ手配ヲ要スルトキハ鉄道局長ノ指揮ヲ受クベシ」というような定めをし、これに基いて、鉄道局長が、列車乘務員又は中継駅係員が小荷物に添付してある小荷物切符に記載された着駅名によつて、小荷物の仕分をし、乘務員は中継駅又は着駅係員に総個数だけを記入した受授証と共に小荷物の引渡をし、中継駅係員は、それぞれの着駅方面別継送列車の乘務員に同じく総個数だけを記入した受授証と共に小荷物を引渡すという個数受授の簡略手続を指令し、このような指令に則つて小荷物運送が行われても小荷物運送について運送人に悪意又は重大な過失があつたものということはできない。尤もこのような簡略手続が許されるということも当時のように極めて切迫した事情の下において初めて云い得ることであつて、現に、証人横田長八の訊問の結果によつて明かなように、鉄道局長がこのような簡略手続の指令を出した場合も、その指令の実施されたのは期限付の極く短い期間であつたことは、この間の消息を物語るものである。而して本件請求における原告のこの点についての主張は單に正規の取扱手続における積卸受授証又は中継受授証に乘務員又は着駅係員の受領印がないということにあるのであるから、鉄道局長の前記のような簡略手続ですら当時の情況では、やむを得ないとする判断の下においては、これをもつて運送人側の悪意若くは重大な過失と解することはできない。且つ又この判断はたゞ当時の切迫した国内全般の事情を前提としているので、偶々問題の地点が戰災を蒙つたか、空襲を受けたか又は夜間のことであつたかによつて結論を異にしない。從つて、たとえ、原告の主張するように高松市は昭和二十年七月四日戰災を蒙つたが、高松駅は火災を免れ、第一三、一七及び一〇五号の各列車はいづれも晝間高松駅を出発する列車であり、又高松・豊永間の鉄道沿線が空襲を受けたことはなかつたとしても、これ等の事実は本件運送について運送人に悪意又は重大な過失がないものとする前記の判断に影響がないものと云わなければならない。
しかも原告は、本件小荷物はいづれも、国有鉄道の小荷物係員又はその他の從業員によつて盗まれたものであると主張するけれども、成立に爭のない甲第十二乃至十九号証及び同第二十七号証によつては、未だもつて右の事実を認定するに足らない。而して、その他国の悪意又は重大な過失については、原告の主張立証がないから、結局本件運送契約不履行を理由とする本訴請求は、国の悪意又は重大な過失を前提とする限りその理由がない。
しかし、本件物件が空襲で焼失したこと及び運送人である国の側に運送品の取扱に関し、注意を怠らなかつたことについては、これを認めるに足る何等の証拠がなく、而して、訴外杉山及び三宅が本件小荷物の運送を国に委託するに際して、要償額の表示をしなかつたことは、原告の明かに爭わないところであるが、本件小荷物の價格がその委託当時重量一瓩当り金八十円の割合を超えるものとして、鉄道運輸規程上これを高價品と認むるに足りる証拠がない。反つて、成立に爭のない乙第一号証の二証人吉永威子及び同金田政吉の証言を綜合するときは、本件三個の小荷物はいづれも、一個の重量が十瓩であつたことを認めることができ、その内容が、前記認定のような物であつたとしたならば、本件物件中、昭和二十年四月二十五日農商省告示第四百二十五号の最高販賣價格表に掲げられた名柄と同一の物件は、その一級品の價格として算定し、その名柄のないものは類似の名柄の物件の價格に照して、その價格を算定すれば、(別紙目録金額欄(二)参照)本件三個の重量合計三十瓩の物件の價格が、合計金千八百十四円であつて、その一瓩当りの價格は金八十円以下であつたと認められる。從つて本件小荷物の運送委託に際して、要償額の表示をしなかつたとしても、その運送契約不履行に基く損害賠償の價は鉄道運輸規程に定める最高金額に限定されない。(この点に関しては、昭和十七年二月二十五日運輸省告示第二十六号旅客及び荷物運送規則第百九十條が貴重品の種類を貨幣、紙幣、有價証券、貴金属等に限定して其の他の種類の貴重品を認めていないので、鉄道運輸規程第二十八條の規定と相矛盾しているのであるが、後者の規定は、鉄道営業法に基く鉄道省令で法規たる性質を有するのに反し、前者は、運輸省内部における内部準則たる性質を有するのに過ぎないから、国と第三者との運送契約上の効力を判断するに際しては、專ら後者の規定に從うべきであつて、前者の規定には考慮を拂うべきでない)。そこで、本件損害賠償の價格は、その小荷物の引渡をなされるべき日の到着地における價格によつて算定さるべきものであるが、本件小荷物中切符番号第三号の小荷物は、昭和二十年六月二十七日鎌倉駅で荷受され、同年七月二十日頃高松駅から豊永駅向けの列車に積み込まれ、切符番号第七二号及び第一二六号の小荷物は、それぞれ同年六月二十二日及び同月二十三日の二回に鎌倉駅で荷受され、同年七月一日頃及び同年六月二十八日頃の二回に、高松駅に到着したことは、前記認定の通りであるから、本件小荷物は、いづれも鎌倉駅で荷受された後数日乃至二十日前後の後には高松駅に到着したこととなるから、当時の混乱した輸送情況を参酌しても、本件小荷物は、いづれも、同年七月初旬から同年八月末頃迄の間に豊永駅に到着すべきものであつたと判断する。從つて、本件小荷物の到着すべき時における到着地である豊永における價格は、前記農商省告示第二百四十五号の定める價格を標準として、算定すべきものであるからその價格は別紙目録第一及び第二の各金額欄(二)の通り合計金千八百十四円であり、この金員を国は損害賠償として、訴外杉山及び同三宅に対して支拂うべき義務があつたのであるが、その損害賠償債権が昭和二十二年九月七日訴外杉山及び同三宅に讓渡され、その旨の債権讓渡の通知が昭和二十二年十二月十日国に到達したことは当事者間に爭なく、而して国の債務者たる地位は昭和二十四年四月一日日本国有鉄道法施行法の施行に伴つて、被告に承継されたから、被告は原告に対して、右金員及びこれに対する本件訴状が送達されたことが当事者間に爭のない昭和二十二年五月九日以降完済に至るまで年六分の割合による商事の遅延損害金を支拂うべき義務がある。そこで、本件運送契約の不履行を理由として、損害賠償金の支拂いを求める原告の本訴請求は、この限度においては、これを正当として認めるべきであるが、その余は棄却すべきであるから、訴訟費用について、民事訴訟法第九十二條、第九十五條を適用して、主文のように判決する。
(裁判官 恒田文次 菅野啓藏 中田秀慧)